睡蓮の幻
泥の中に根を張って、冷たい水の上に美しい花を咲かせる。その花の名前はナークローゼン(睡蓮)。
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ドールハウス
現在のラヴィエラと過去のラヴィエラの話。


【ドールハウス】

白薔薇の付いたカチューシャ。レース編みのケープ。
フェイクパールのネックレス。チェックのベスト。
茶色の編みあげブーツ。花模様のスカート。フリルたっぷりキャミソール。
これは先月買ったもの。
その前の月もたくさんお買いものしちゃった。
今月は薔薇色ベルベットのジャケットだけよ。今のところは。

気付いたらたくさん物が増えていた。
放浪してた頃はトランクひとつだけだったのに。
これじゃお引っ越しも大変。
だからアクスヘイムに小さな部屋を借りたの。
都市国家間を移動するのは、大荷物じゃ無理だから。
この部屋に入りきらなくなったら、メロのお屋敷に置かせてもらおうかな。

あんまり物を増やさない方がいいって分かってるのに、
ついつい買っちゃうのよね。楽しくて。
自分で稼いだお金で自由に買い物するのって楽しいわ。
記憶を失う前の私もそうだったのかしら?
たくさん買い物しちゃってたのかしら?

■ ■ ■

「ラヴィエラ、このドレスはとっておこうか?」

兄さんはにっこり笑って言った。
私の視線に気づいたらしい。

「いいよ。私はいらないから」
「何で?今回は収穫多かったし、他の戦利品を売れば十分儲かる。
 このドレス一着くらい貰っても、誰も文句言わないよ」

そもそも俺が言わせないけどな、誰にも。
そう言葉を続ける兄さんは、笑顔だけど少し怖い。
案の定、仕分け担当の部下の顔がこわばった。

「もちろん僕らは何もいいませんよー」
「だろ? だから遠慮しなくていいんだってば」
「そうじゃなくて、そのドレスは」
「ああ、中古なのが嫌なのか? そうだよな、これ売って新しいの買おう」
「いいの、本当に。ドレスはいらないわ」

持ち主を失ったドレス。
真珠が散りばめられた、白い絹のロングドレス。
『戦利品』の中でもとりわけ綺麗なそれに目を奪われた自分が恥ずかしい。
これは私のじゃない。私のものにはならない。なってはいけない。
でも、これを売って新しいのを買ったところで何も変わらない。
新しいドレスにも罪の香りは纏わりつく。
ううん、ドレスだけじゃない。
もうずっとずっと前から私自身に。

「遠慮しなくてもいいのに。どうせ金はあるんだしさ」

価値ある物とそうでない物を分けながら、兄さんはつまらなそうに言う。

「それじゃあ、その分を下層の人達に配る?」
「それなんだけど、もうやめようって話になったんだ」
「え?」
「もう十分すぎるほどの金はやった。だからこれからは全部俺達で分ける」
「その方が僕らのやる気も出ますしねー」
「それぞれの取り分が増えるし、モチベーションも上がる。一石二鳥だろ」
「さすがリーダー!わかってるー!」
「……でも、」
「大丈夫だよ。ラヴィエラは何も心配しなくていい。俺に任せて、全部」
「さすがリーダー!妹思いー!」
「……」

私達は義賊ですらなくなった。単なる強盗集団になってしまった。
でも私は何も言えなかった。勇気がなかった。

* * *

私と兄さんが暮らす家は、ナークローゼンの活動拠点の近くにある。
廃墟を改築して作った小さな家。
私の部屋はその二階。
白いレースのカーテン。淡いピンク色のベッド。
かつて憧れていた物語のお姫様みたいな部屋。
全部兄さんが用意してくれた。
ここだけ現実から切り離されているような、夢であふれた空間。
他人の悪夢の上に築かれた夢の城。

「ラヴィエラ、これ」

兄さんは部屋に入るなり、プレゼント用のリボンがついた箱を差し出した。
私はお礼を言ってリボンを解く。
中に入っていたのは真っ白なシルクのワンピースだった。
大好きな、白。何にも染まってない、真っ白。
……ううん、違う。罪の色に染まってる。
それでも、私はそれを受け取り、笑みを作る。

「この前、ドレスはいらないって言ってたから、代わりにワンピースにしたんだ」
「ありがとう。でも私のじゃなくて自分のを買えばいいのに」
「いいんだ。俺がラヴィエラに買ってやりたいんだよ」
「……ありがとう」
「どういたしまして。明日、それ着て上層に行こうか。
 二人で何か美味い物を食べてこよう。何がいい?」
「ねえ、兄さん。私ね、やりたいことがあるの」
「何だ?何でもいいよ。何でも叶えてあげる」
「空がみたい。本当の空が」

もしも本物の青空を見ることができたら、何かが変わりそうな気がする。
それは予感。根拠は何もないけれど。
無限に広がる青い空を見たら、流れる風を感じたら、太陽の光を浴びたら、
水上に咲く睡蓮のような、清らかな強さを手に入れることができるかしら。

どうか私に勇気を。
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