睡蓮の幻
泥の中に根を張って、冷たい水の上に美しい花を咲かせる。その花の名前はナークローゼン(睡蓮)。
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睡蓮の夢(1) 
ラヴィエラの過去話。運命の転換期その1。
※注意※
暗いお話です。イラッとするかもしれません。

■ ■ 睡蓮の夢(1)■ ■

泥の中に根を張って、冷たい水の上に美しい花を咲かせる。
その花の名は――― ナークローゼン(睡蓮)


「なあ、ラヴィエラ」
「なあに?兄さん」
「睡蓮の花ってさ、綺麗だよな」
「そうね」
「あの花は泥の中に根を張ってる。水の中のどろどろした所に」
「へえ。そうなんだ」
「そこから養分を吸い取って、水上で綺麗な花を咲かせるんだ」
「……」
「俺達もそうやって生きていこう」
「……ええ」

■ ■ ■

ある少年が、ある最下層のスラム街を走っていた。
月に翳した蜂蜜の色なのに、その瞳は欠片も甘さを宿してはいない。
いつも冷たいそれは今、怒りと焦りで燃えていた。
その理由は彼の妹にある。
居るはずの場所に居ない妹。
失うわけにはいかない、たった一人の家族。
街に流れる不穏な噂が、彼の不安を煽った。
最近、子供が街から消えている。
人攫いが来ているのだ、この街に。
もしかしたら、今頃……。

(あいつに伝えておけば良かった!)

嫌な話はなるべく耳に入れたくない。
兄としての、その思いが裏目に出た。
焦りは募る。
だがしかし、頭は妙に冴えていた。
絶対に見つかる。いや、見つける。
この階層からの出口は一か所だけ。
少年はひたすら走った。
見つけた後のことを考えながら。

ほどなくして、目的の人物が見つかった。
少女と、男。
少年は隠し持ったナイフの柄をぎゅっと握った。

■ ■ ■

「何やってんだよ、お前は!」
「だって、上層に連れてってくれるって……兄さんも後から来るって……」
「そんなことあるわけないだろう!?嘘に決まってる!」

少年に怒られて、小さい少女はますます小さくなった。

「でも、孤児院の人だって……」
「じゃあなんでコイツの鞄からこんなもんが出てくるんだよ」

じゃらり、と音を立てたのは鎖。そして、手錠。

「コイツは人さらいだ。子供を騙して、連れていくんだ」

少年は震える少女をぎゅうっと抱きしめた。
少年の手も震えていた。
間に合って良かった、と心の底から思った。

「お前は馬鹿だよ、ラヴィエラ」
「ごめんなさい、兄さん」

でも、馬鹿でもいい。
少年は思った。
薄暗いスラムの中で、騙しあう人間の中で、汚い世の中で、
綺麗な瞳の、そのままで。
少年と同じ色の瞳を持つ少女。
だが少年にとって、少女の瞳は全く別の色をしているように思えた。

少年は紅く染まって動かなくなった男の外套から
財布を抜き取った。

「……ねえ、兄さん。この人……」
「気にするなよ、ラヴィ。いいんだよ」
「でも」
「いいんだ。こいつは悪人だ。だからいいんだ」
「でも」
「もう大丈夫」

一体何が『大丈夫』なのか。
少女にはさっぱりわからなかった。
分かるのは兄が手を汚してしまったことと、それが自分のせいであること。

「これからは、飢えることも、寒さに震えることもない」

どうしていままで気付かなかったんだろう、と少年は呟く。

「もっと早くこうすれば良かったんだ」

少年は微笑んだ。
財布の中から金を取り出して。

「もう何も心配いらないよ」
「……」

少女は口を閉ざした。
何を言えばいいのかわからなかった。

■ ■ ■

「悪いことして儲けてるやつから金を奪って何が悪い」
「その金を俺達が生きるために使って何が悪い」

少年は事あるごとに、そう呟く。
それを聞いている少女も、そう考えるようになった。
罪悪感はあるけれど。

少年に共感する子供達が、周りに集まった。
一人ではできない事も二人でならできる。
二人ではできない事も十人でならできる。

「悪人から金を奪い、貧しい人に分け与える」

そんな大義名分を掲げた盗賊団ができた。
悪いことだけど、悪いことじゃない。
良いことだけど、良いことじゃない。
少女の感覚はだんだんと麻痺していった。

「睡蓮の花のように生きるんだ」
「腐敗した金持ち連中という汚泥から養分を吸い取ってやろう」
「そして美しい花を咲かせよう」
「俺達の名前はナークローゼン」
「義賊団ナークローゼンだ」

義賊といえど、盗賊は盗賊。
彼らは紛れもなく犯罪者だった。
少年が守りたかった、大事な妹も。

少女の手を血で汚さなかったことだけが、
少年の、兄としての最後の矜持だった。


【続く】


兄ちゃんは中二病気味。
ラヴィエラは流されるまま。
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