睡蓮の幻
泥の中に根を張って、冷たい水の上に美しい花を咲かせる。その花の名前はナークローゼン(睡蓮)。
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淑女ごっこと蝶々
予定帳日記から派生した偽シナ。
ルーンさんにお付き合い願いました。

* * *

淑女ごっこと蝶々

『淑女ごっこ』
それはラヴィエラが一人で始めた遊びである。
休日に、いつもより少しだけおめかしして、
貴族のお嬢さんがするような高尚なことをしてみる……ただそれだけ。

例えば、
フリルの付いたワンピースを着て、画廊に行ってみる。
例えば、
シルクの長手袋を身に付けて、ちょっと高い紅茶を飲んでみる。

日常との差異はほんのわずか。些細なこと。
でも、それはラヴィエラの心を潤した。
音が、絵が、味が、心に沁み込んでくる。
耳で、目で、舌で、芸術を味わう。
ものの良し悪しなんて本当は全然わからない。
けれども、憧れに少し近づいたような錯覚を起こす。
それが心地よかった。

でも、最近少し寂しさを感じるようになった。

一人きりだって、綺麗なものは綺麗だし、美味しいものは美味しい。

「でも、誰かを誘ったらきっともっと素敵だわ!」

近々、ある楽団のコンサートが開かれる。
『楽団のオーディションに受かる』エンディングを見た相手から
チケットを無料で譲ってもらえた。
オーケストラコンサートで淑女ごっこ。

「ルーンを誘ってみようかしら」

■ ■ ■

ルーンミリカ(c05152)は自室で一人ファッションショーを繰り広げていた。
ありったけの服を引っ張り出して、色々組み合わせてみる。

(お洒落してきてねって言われたけど、どんな服着て行こうかなっ?
ラヴィさんとのお出かけも嬉しいし、とってもわくわくしちゃう♪)

ルーンミリカは淡いミントグリーンのシフォンワンピースを手に取った。
ふくらはぎの辺りで揺れる裾には蝶と花の柄。
五分丈の、柔らかく透ける袖。
ひらひらふわふわしたデザインはルーンミリカに良く似合っていた。

「うん!これにしようかなっ!」

鏡の前でアクセサリーを合わせてみる。
迷った末に選んだのは、白いレースで飾った淡いピンク色の薔薇のコサージュ。

(ラヴィさんはどんなお洋服で来るのかな?
コンサートはどんな演奏が聴けるんだろう?)

着ていく洋服は決まったけれど、

「わくわくどきどきで、今日中々眠れないかも~っ!」


■ ■ ■

今日は約束の日。
だから【舞い飛ぶ紫蝶亭】はお休み。
ルーンミリカは髪に紫蝶の髪飾りを付けて、鏡で念入りにチェックする。
よし!と意気込んで、約束の時間よりも前に着くよう出発した。

ちょっと気取って白いレースの日傘をさして歩く。

(ラヴィさんはどんな服着てくるのかな?
お洒落ってこんな感じでいいのかな? 
ラヴィさんと並んでおかしくないかな?)

気分はちょっとした、デート前の女の子のよう。
大きな楽しみと小さな不安が入り混じる。
それはたぶん『淑女ごっこ』という特殊なシチュエーションのせい。

(ひょっとしたらラヴィさんも早く着いてるかな?)

ルーンミリカの予想通り、待ち合わせ場所にはラヴィエラがいた。

ラヴィエラは約束していた時間よりもかなり早めに着いていた。
若干、張り切りすぎであるのは否めないが、
初めて『淑女ごっこ』の時間を友達と共有するのが嬉しくて、
待っている時間も楽しいから、早く来ただけのこと。

「わーっ!待たせちゃったかな?ごめんねっ?」
「大丈夫よ」

駆け足になるルーンミリカに微笑んだ。
ラヴィエラの微笑みにルーンミリカは笑顔を返す。
可愛くて、朗らかで、自然体。
自分にないものを持っている憧れの、大好きなお友達。
ラヴィエラはそんなルーンミリカの笑顔が好きだった。

「わーっ!ラヴィさんとっても素敵っ♪ 
えへへ♪一緒に歩いていたら、それだけでわくわくしてきちゃいそうなの♪」

白いドレス風ワンピースに黒い長手袋を身に付けたラヴィエラの姿を見て、
目を輝かせて絶賛するルーンミリカ。
ストレートな賛辞に、ラヴィエラは頬を染める。

「それは褒めすぎよ!ルーンこそ、そのワンピース、とても似合ってるわ!
爽やかでヒラヒラしてて初夏の蝶々みたい。アクセサリーも華やかで素敵だわ」
「わわっ!ラヴィさんだって褒めすぎだよっ!」
「そんなことないわよ。正直に言っただけ」
「私だって正直に言っただけだよー!」

くすくすと笑いながら、楽しく話しながら、コンサート会場へ向かう。
時々、思い出したようにお澄まし気味に、淑女になって。

■ ■ ■

会場は、洗練された石造りの建物の中にあった。
それほど大きくはないが、音の響きを研究して作られたホール。
一級精霊建築士が設計したらしい。
ステージ上ではハープやチェロ、ヴァイオリン等の演奏者達が
真剣な面持ちで指揮者を待っていた。

「今日の演奏はパッハのカンタータ2008番『羊は草食動物』よ」

ラヴィエラは知ったかぶって曲の解説をする。
あたかも音楽通であるかのように。
しかし、それは間違っていた。
音楽に詳しいルーンミリカは、一瞬きょとんとする。
彼女は音楽が大好きで、色々聞いているうちに様々な曲を覚えていった。
有名な曲はほとんど知っている。
だからラヴィエラの間違いに気付いた。

「んと、多分『羊は穏やかに草を食み』だったと思うよ?」
「えっ!そ、そうだったの……」
「ふふ、でも似てるよね!」

ルーンミリカは微笑ましげに間違いを正し、話を広げた。

「あ!もし、ラヴィさんの言ったみたいに、
『羊は草食動物』ってタイトルだったらどんな曲になるんだろ? 
そうやって考えるのも楽しいと思わない?」
「ええ、そうね!きっと楽しいわ!」

ルーンミリカの言葉で、ラヴィエラの気恥ずかしさが消えた。
良い所を見せたくて、つい格好付けてしまったラヴィエラだったが、
ルーンミリカはそんな様子も微笑ましいと思っていた。

舞台上に指揮者が登場し、客席に向かって一礼すると拍手が起こった。
指揮者がタクトを振り上げた瞬間、会場の音が全て消えた。
その一瞬の静寂の後、緩やかに音が流れ出し、
穏やかな調べが会場内に響き渡る。
ルーンミリカは大好きな『音楽』にうっとりと聞き惚れた。
その横でラヴィエラも綺麗な音に聞き入って目を閉じる。
演奏が終わると観客総立ちのスタンディングオベーション。
コンサートは大成功だった。

■ ■ ■

「とっても素敵なコンサートだった!
えへへ、目を瞑ったら今にも曲が聞こえてきそう♪」

ルーンミリカの足取りはいつにもまして軽く、声も弾む。

「ラヴィさんと一緒に、同じ音楽共有できるのも凄く嬉しかったの♪ 
ふふ、音楽のお話も楽しかったしね。ありがとう!ラヴィさん♪」
「お礼を言うのは私の方だわ。ルーンと一緒で楽しかったもの」

二人ともにこにこ笑顔で、多くの人が行き交う大通りを歩く。
そこで吟遊詩人の青年が一人でハープを演奏していた。
それ程上手くはないが、とても楽しそうに奏でている。
楽しげな姿に惹かれて立ち止り、その音色に耳を傾けた。
すると青年は演奏の手を止めて、ルーンミリカに軽い調子で話しかけた。

「ヘイ!お嬢ちゃん!一緒に歌わない?踊りでもいいぜ!」
「わぁ♪うんうん!是非っ♪じゃあ、踊っちゃおうかな♪」
「そうこなくっちゃ!」

音楽好きな詩人は、音楽好きな人を見分ける才を持っていた。
ルーンミリカが楽しそうに応じたのを見て、直感が正しかったことを知る。
彼は嬉しそうにハープ演奏を再開した。

「そうだ!ね、ラヴィさんも一緒にどう?」
「わ、私も?」

ルーンミリカはラヴィエラに手を差し出した。
ラヴィエラは一瞬だけ戸惑いの表情を見せるも、その手を取った。
音に合わせて、ルーンミリカは軽やかに舞う。
蝶々のように、ひらひらふわり。
踊りを知らないラヴィエラも、見よう見まねで踊る。
繋いだ手が、さり気なくリードしてくれる。

「えへへ♪一緒に踊るのって楽しいね♪ラヴィさんも上手上手!素敵だよ♪」
「うふふ。こんな風に踊るのって初めてだけど、楽しいわ!」

楽しく踊る女の子二人につられたのか、詩人も体を揺らしながら演奏する。
楽しさは伝染し、足を止める人が増え、踊りの輪に加わる人も現れて……。
気付けばたくさんの人が一緒に踊っていた。

踊りの後、

「誘ってくれてありがとう!これはお礼っ」

地面に置かれた詩人の帽子の中にダルク硬貨を二枚入れた。
またどこかで会えるといいね。楽しい演奏をこれからも、ね。
そんな思いを込めて。

■ ■ ■

「なんだかお腹空いてきちゃったわ」
「あ、じゃあ、私のお店に行く?ラヴィさんの好きな物作るよ♪」
「でも今日はお休みの日でしょ?きっちり休まなくちゃ!」

ラヴィエラはルーンミリカの料理が大好きだった。
美味しくて温かい、理想の家庭料理そのもの。
【舞い飛ぶ紫蝶亭】を訪れれば、いつでも笑顔で迎えてくれて
すぐに美味しい料理を出してくれる。

「お料理するの好きだし、それくらい平気だよ?」
「でもたまには料理をしてもらう側になるのもいいんじゃない?」

ルーンミリカは、休業日には友達に無料で手料理を振る舞うことがある。
ラヴィエラもご相伴にあずかることが何度かあった。
でも今日は別。
まだ淑女ごっこは終わっていない。
もう少し淑女の真似事を。

「今日はね、私のお気に入りのお店を紹介するわ」
「わぁっ♪ラヴィさんのお気に入り?どんなところかなっ?」

紫の瞳が楽しそうに輝く。
笑顔のルーンミリカに、ラヴィエラもにっこり微笑んだ。

「それは行ってからのお楽しみ!」
「えへへ♪楽しみっ!」

■ ■ ■

楽しい時間はあっという間。
終わるのを惜しむように、太陽がゆっくりゆっくり傾いていく。
ルーンミリカとラヴィエラも、話に花を咲かせながらゆっくり帰る。
お互いの帰路が重なる限り一緒に。

(今日という日はとってもきらきら。素敵な一日。
沢山笑って沢山話して、きっとずっと先になっても、素敵な思い出)

ルーンミリカは心の中でラヴィエラに感謝した。
勿論、言葉にも表す。

「ラヴィさん、今日はほんとにありがとう!
とってもとっても、きらきら素敵な一日だったの♪
ふふ、帰ったらとっても素敵な夢が見られそう!」
「私こそ、ありがとう!ルーンが付きあってくれたお陰で
楽しい休日を過ごせたわ!」

素敵な『ありがとう』の応酬。
それはとても幸せなこと。
心がほんわか温かくなる。

「えへへ♪また、一緒にお出かけしようね!」
「ええ、是非!」

絶対、また一緒に。
その思いは強く強く。
お互いがそう思っているのだから、きっとまた、すぐに。
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