睡蓮の幻
泥の中に根を張って、冷たい水の上に美しい花を咲かせる。その花の名前はナークローゼン(睡蓮)。
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Intersection 交差地点
ラヴィエラとメロルーシャさんの出会いを偽シナにしました。
メロさんは別世界から知っている唯一の友人です。
(他の方々とは出会えなかったり、休止しちゃってたり)
ついつい詰め込みすぎて、ものすごく長くなってしまいました。

* * *

Intersection 交差地点

吐き出す息が白く凍る、寒い寒い冬の夜。
空に浮かぶは精霊術で描き出された幻の青い月。
二度目の出会いは運命の悪戯だったのか、それとも幸運の導きか……。

■Stranger

ルチアノ伯爵が屋敷を構えた所よりもずっとずっと下の階層、
治安が良いとはお世辞にも言えない下層区域にそのテントはあった。
真っ赤な色した巨大なテント。
その中に一歩足を踏み入れれば、
古いサーカス一座が創りだす不思議な世界へ迷い込む。

でも、それも今夜まで。

赤を基調とした絢爛な舞台衣装に身を包んだメロルーシャ(c02040)。
彼女の口元はどこか楽しげに弧を描く。
葡萄色のポニーテールを軽やかに揺らして、ショーの相棒達の所へ。

「今日もお客様にとびきり素敵なショーを見せて差し上げなくちゃな」

連日賑わっている一座の公演。
だけど今夜はいつにも増して客が多いことだろう。
この地域での公演はこれでお終いだから。

- - - - - - - - - - - - - - -

ラヴィエラ(c03887)は迷っていた。
質の良い剣を安価で売っているという鍛冶屋の噂を聞いて、
彼の店を訪ねる『はず』だった。
でも、どこを探してもない。

「下りる階層を間違えたのかしら?」

にせものの陽は落ちて、まやかしの月が昇る。
ラヴィエラは鍛冶屋探しを諦め、代わりに今夜の宿を探すことにした。
宿屋を求めて通りを歩いていると、何やら赤い物が視界に入った。
それは、大きな大きな赤いテントだった。
みすぼらしい身なりの子供達が目を輝かせて走っていく。
彼らは無料で入れてもらえるようだ。
ラヴィエラの足は自然とそちらへ向かう。
入場料を払い、テントの中へ。
なんとなく見てみたくなったのだ。
子供達の瞳を夢色に彩る力を持った、不思議なショーを。


■First Encounter

舞台袖からじっと客席を見つめる赤い瞳。
その視線は観客のひとりひとり余すことなく向けられる。
公演が始まる前の期待に満ちた顔を見るのは嫌いじゃない。
もちろん公演中の、ショーに夢中になってる顔も驚いた顔も。
メロルーシャは、自分の出番でない時は客席を見ている。
常連客の顔はもうすっかり覚えてしまった。

(あのお嬢さんは初めて見る顔だな)

馴染みになった子供達の後ろの席に座った少女に目を向ける。

(ご新規のお客様だって大歓迎、だ)

メロルーシャはにやにや笑いながら踵を返す。
さあ、そろそろショーの時間だ。

- - - - - - - - - - - - - - -

ピエロの芝居がかった口上で幕を開けた一座の公演。
玉乗り、手品、ジャグリング。
サーカスの花形、空中ブランコ。
ラヴィエラはすっかりサーカスの不思議な世界に魅了された。
他の観客同様、熱を帯びた瞳は舞台上に釘付けとなる。

(あら?あの子、空中ブランコもやってなかった?)

猛獣達と共に舞台に上がったメロルーシャに目を見張る。
空中ブランコだけでなく猛獣ショーまでもこなす彼女は
正にサーカスの花形だった。
猛禽が彼女の指示通りに宙を舞い、猛獣が炎の輪を潜り抜ける。
恐ろしげな猛獣達も、彼女にとってはまるで友達のよう。
親しげに、でも毅然と。
操っているのか、遊んでいるのか。

(すごいわ!なんて楽しそう……!)

素敵なショーはあっという間。
深々とお辞儀をするメロルーシャと動物達。
彼女達にラヴィエラは惜しみない拍手を贈る。
顔をあげたメロルーシャと一瞬だけ目があったような気がした。


■First Contact  

熱気にあふれたラスト公演の、その次の夜。
空には青い月が冷たく輝いていた。

ラヴィエラは未だにこの階層で迷っていた。
買った地図はでたらめな偽物。
人に道を尋ねれば、そっけなくあしらわれるか、
真っ赤な嘘を吹き込まれるか。

「もう!夜になっちゃったじゃない!」

入り組んだ下層区域。
すっかり迷子になってしまったラヴィエラは途方に暮れて空を仰ぐ。
スカイランナーだったら、上から道を探せるのに。
すると、
青い光を遮って、影が走った。
闇色のスカートを翻し、宙を翔けるその人は……

「あっ!サーカスの人!」

- - - - - - - - - - - - - - -

終わった。終わってしまった。
もう二度と、サーカスショーの公演は無い。
当然だ。一座が無くなってしまったんだから。
メロルーシャは荒れた心の赴くまま、夜の空を駆け抜けた。
屋根から屋根へ、飛ぶように。
最終公演の後、いつものようにテントを畳んで次の街へ行くはずだった。
でも、それはできなかった。
何があったのか彼女は決して語らないが、何かがあったのは明白だ。
彼女にいつものにやにや笑いはなく、少しだけ泣きそうな顔をしていた。

「あっ!サーカスの人!」

不意に声をかけられたメロルーシャは思わず立ち止った。
が、そのまま無視して走り出す。
今は誰とも話す気分じゃない。
放っておいてほしかった。

「ちょっと待って!ねえ!ねえったら!」

でも、必死に自分を呼びとめる声の主の顔に見覚えがあったので
渋々立ち止った。

(あの日のお客様か)

本当に最後の公演になってしまったあの日の……。
メロルーシャはスタッと軽やかに路上に下りた。

「貴女、サーカスの人よね?」
「そうだよ。めろはサーカスの猛獣使いだ」

正確には『元・猛獣使い』になってしまっているけれど。
そこまで話す気は無いし、話す義理も無い。
メロルーシャはつっけんどんに言葉を続けた。

「貴女は、あの日のお客様だろ。……何か、用?」
「あら、覚えててくれたのね!」

ラヴィエラは微笑んだ。
『素敵な猛獣使いの女の子』が観客の一人に過ぎない自分のことを
覚えていてくれたことが予想外で嬉しかったからだ。

「実は迷子になっちゃったのよ。ここって入り組んでるから……」

地図もでたらめだったし、と付け加えながら地図を広げた。
メロルーシャは無表情のまま地図を一瞥する。

「……迷子、ね。
それにしても、なあに、この地図。紛い物も良い所じゃないか。
自分の勘に頼った方が、まだ幾分マシだ。……正しいものを、書こうか」
「ええ、お願い。助かるわ!」

メロルーシャはラヴィエラからペンを受け取り、地図を裏返す。
そして、そこにペンを走らせた。
あっという間に描き上がる正確な地図。

「お嬢さん一人じゃ、夜は危ないから。気をつけなよ」
「ありがとう!これでこの階層から出られるわ……!」
「それじゃあね。さよなら」

早く解放して欲しい、早く一人になりたい。
そういう思いで正確な地図を描いて渡したものの……
ラヴィエラはそれでも間違った道へ歩きだした。

(何でそっちに行くんだろう……)

問題があるのは紛い物の地図より、このお嬢さんなんじゃないのか?
なんて、心の中で毒づきながらも放っておくことはできなかった。
それはラヴィエラが『最後のお客様』だったからかもしれない。
不承不承、メロルーシャはラヴィエラに声をかけた。

「そっちは違う」
「えっ!?」
「分かり易い大通りまで送るよ。そこからなら迷わない、多分」

あからさまにホッとした顔を見せたラヴィエラにふと疑問が浮かぶ。

「めろの地図、そんなに分かり難かった?」
「そんなことないわ。ええと、暗いからよく分からなくて……」
「月明かりで十分見えるけどな」
「え、ええと、地図読むの、そんなに得意じゃなくて……」
「君は、方向音痴なのか」
「ち、違うわ!方向感覚が時々おかしくなるだけよ」

一般的にそういう人を方向音痴というのだろう。
それを認めないラヴィエラの言い分はおかしくて、

(変な、お嬢さん)

仕方なく申し出た道案内だったけれど、
人と会話をすることで多少は気が紛れた。
重く沈んだ気持ちを拭い去ることはできないけれど、
まだ笑うことはできないけれど、
独りで走っていた時よりも少し、ほんの少しだけ……。



次の再会の時、
メロルーシャは再びにやにや笑うようになっていた。

「メロって童話に出てくる笑う猫みたいね」
「消えたり現れたりするあの猫のこと、だな」
「そう、その猫」

あの日、あの時、あの場所に、貴女が現れてくれて良かったわ。
だって、出会わなかったらお友達になれなかったでしょう?
あの夜の貴女は笑ってなかったけれど、今の貴女は笑ってる。
私ね、そのことが嬉しいのよ。
どうかこれからも笑ってる顔を見せてね。

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このブログはPBW『エンドブレイカー!』のPCラヴィエラ(c03887)のキャラブログです。

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