睡蓮の幻
泥の中に根を張って、冷たい水の上に美しい花を咲かせる。その花の名前はナークローゼン(睡蓮)。
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記憶の破片
からっぽの家から出ると鳩がいた。
あら、この子、メロの伝書鳩の鳩胸君じゃない?
もしかしてずっとついてきてたの?
きっとメロの言いつけを守ってるのね。お利口さん。
ねえ、私が家宅捜索してる間中ここで待ってたの?
言ってくれたら家の中に招待したのに……。
まあ、いいわ。
これから出かけるところなんだけど、一緒に行きましょう。

【記憶の破片】

知らなきゃ良かった。
知らないよりは良かった。
どっちなんだろう?


奴隷商人の屋敷
北地区 旧市街外れ 森のそば(地図3-A ☆印のところ)
一つ上の階 工業都市
一つ下の階 放棄領域


日記に書いてあったこの情報と、家の中から発見した地図をもとに
最後の事件現場であろう屋敷へ向かった。
■ ■ ■

工業都市っていうより工業街っていう規模だけど
それなりに発展しているみたい。
件の奴隷商人は、集めた奴隷をこの街の事業者に売っていた。
なんでお金持ちの奴隷商人が放棄領域真上の階層に住んでるのか不思議だったけど取引しやすいからだったのね。
一通り、情報を集めてから、階層をひとつ降りて奴隷商人の屋敷へ。

高い鉄柵の上には鉄条網。
柵の隙間から見える屋敷はかなりの大きさ。
中に入ったらまずいかしら?

「ちょっと貴女、そんなところで何してるの? 何か用でもあるの?」

老婦人に声をかけられた。
彼女の目には不信感ではなく、好奇心が宿っていた。

「あ、私は新聞記者で……」
「まあ、記者さん? じゃあ、あの事件のこと調べてるのかしら?」

老婦人は嬉々として話し出した。

「酷い話なのよ。強盗が入って、ここの主も家族も使用人も皆殺し!」

……やっぱり。

「でも不思議なことに、強盗も皆死んでたの! この家で!」

……え、何それ! 何で!?
っていうか『皆』?
誰も生き残ってないのかしら?

「理由はわからないけど、殺し合いでもしたのかしら?」

呆然とする私を余所に、老婦人は話を続ける。

「そうそう、ここの一人娘は森の中で遺体で発見されたわ」
「そう、ですか……」

頭が痛い。
胸も痛む。
なんだろう、これ。

「その森って、この家の近くの森のことですか?」

「そうよ。逃げようとして殺されちゃったのかしらね。可哀想に!
大きい声じゃ言えないけど、この家の主人は悪いことして金を稼いでいてね。
そのせいで恨みを買っていたのかしらね。でも娘さんは本当に良い子だったのよ」

「あの、私、森の方へ取材にいってみます」

「あらそう、気を付けてね。そっちは地面が崩落したままの場所があるから。
貧乏人が多い階層だからって修復を後回しにされててね。
まあ、税金納めてない人がほとんどだから仕方ないっちゃ仕方ないけどさあ。
それにしたって政府ももうちょい」

「お話を聞かせてくれてありがとうございました」

長くなりそうな老婦人の言葉をさえぎって、頭を下げた。
それから森へと走る。
見覚えがあるような、ないような。
前にも森の中を走ったことがある気がする。
あの時はたしか暗かった。
……あの時?
記憶を、頭の中を、ぐるぐるかき混ぜられてるみたい。
気持ち悪さを感じつつも足は止まらない。

森の端。
道が途切れていた。
老婦人の話の通り、地面が崩れていた。
覗き込むと、高い建物の屋根がいくつか見える。
スカイランナーなら上手く着地できるかも。
スカイランナーじゃない私でも運が良ければ何とか……。
そう、何とかなったのよ。実際に。
私はここから落ちたことがあった。

不快なフラッシュバックが起こる。
兄さんは怒っていた。
兄さんは泣いていた。
そうだわ。思い出した。
兄さんの悲しい顔。
兄さんは、あの時、私を、斬った。


犯した罪の数々。
事件の顛末。
過去の私。

事実が見えてきた。
私は騎士じゃない。
悪人だった。

でもね、事実が分かっても「実感」がないの。
昔見たお芝居のワンシーンを思い出すような感覚。
演者は私自身だというのに。

まだ逃げているってことなのかしら?

知らなきゃ良かった。
知らないよりは良かった。
どっちなんだろう?
きっと、どちらも。

でも、それ以上に、
「知られたくない」


大好きな人達には特に知られたくない。

事実を知られて軽蔑されたら?
嫌われたら?
そんなことになるくらいなら
私は事実を隠し通す。

だって、耐えられない。
大好きな人達から離れるなんて
暖かな場所から去るなんて
できっこない。
だから、ごめんね。
本当のことは言えないの。

■ ■ ■

「鳩胸君」

呼びかけると鞄の中から伝書鳩がぴょっこり顔を出した。
取材中、この中に隠れていてもらったの。
鳩を連れて歩くと目立っちゃいそうだったから。
窮屈だったかしら?
ごめんね。

「そろそろ待ち合わせの時間ね。メロにちょっと遅れちゃうって伝えて」

鳩胸君にお手紙を託す。

「君は空が飛べるから、私よりも早く集合場所に行けるでしょう?」

心配しないで。
遅くなっても必ず行くから。
大丈夫だから。
私は、大丈夫。

【終わり】
(里帰り編終了。
メロさんのブログとちょっとだけリンクしてます。
鳩胸君がついてきてくれたところが。
落っこちればちゃんと記憶が戻るかもしれないけど、
今、骨折するのもなんだなあと思ったので、この形になりました。
中途半端!
そんでもって変なベクトルに前向き。
ラヴィエラが憧れる正々堂々とした騎士道精神とは程遠いけど、
大好きな人達には自分の嫌な部分は極力見せたくない!と思っちゃうのは仕方ない。

ここまで読んで下さってありがとうございました!)
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