睡蓮の幻
泥の中に根を張って、冷たい水の上に美しい花を咲かせる。その花の名前はナークローゼン(睡蓮)。
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【 魔法の指と蒼穹のドレス 】
シャレンさんとの偽シナ。
リヴァイアサン大祭より数週間前の話。

【 魔法の指と蒼穹のドレス 】

今度のパーティー用に新しいドレスを!
意気込んで買い物に来たラヴィエラ。
収穫祭用に買ったドレスが一着あるけれど、
それとは別のドレスを着たいのが乙女心というもの。
いや、乙女心というよりは見栄と言った方が正しいかもしれない。

(やっぱりターンの時に裾がふわっと広がるのは絶対条件よね。
 前のドレスより長めにしようかしら。その方が大人っぽいわ)
 
ブティックの中、希望に近いドレスを探すが中々ピンと来ない。
それ以前にもっと重要な事、忘れてはいけない事に気付いた。
『値段』である。
さりげなく値札をチェックして、思わず瞠目。

(うそ!高い!なんで!?)

収穫祭のドレスもこの店で買ったのだが、ここまで高くは無かったはずだ。

「あの、先月ここでドレスを買ったんですけど、値段がもう少し、その」
「先月は当店のオーナーの誕生日でして。特別セールを行っていたのです」

■ ■ ■

(買えない! あんな値段じゃ買えないわ!)

高級店ではないブティックでもドレスの値段は高かった。
今のラヴィエラに値の張るものは無理だった。

(あーあ、もうちょっとお金貯めておけばよかったわ……)

すっかり意気消沈して、とぼとぼ歩いていると、

「アラ、ラヴィじゃないノ! 偶然ネ☆」
「シャレン!」

仲良しの友達に会った。
シャレン・ヴィーゲンリード(c05702)。
道化のような衣装から細い手足がすらりと伸びる、歌い手の少女。

「どうしたノ? いつもより元気がないように見えるケド」
「……実はね、感謝祭のドレスが予算オーバーで買えないのよー!」

この世の終わりのような顔して嘆くラヴィエラを映して、
シャレンの大きな緑の目がパチリと瞬いた。

「予算はいくらナノ?」
「300ダルク」
「それなら十分ヨ」
「え?」
「ボクが仕立ててあげるワ」
「本当に!?」

ラヴィエラは即座に飛びついた。
シャレンの裁縫の腕前は良く知っている。
その上センスも良いのだから飛びつかないはずが無い。

「ふふ、ボク、自分の衣装を考えるのも好きだケド、
 実は人を飾り立てるのも大好きナノ」

特に、普段見ないような格好とかさせるのってサイコーよネ。

ニヤリと笑って続けた言葉に、ラヴィエラはベリアスの姿(女装)を思い出した。
傾き荘の皆(というか一部の女性陣)で詰め寄って、
嬉々としてベリアスを女装させたことがあるのだ。

「ラヴィったら、急に笑いだしてどうしたノ?」
「ベリアスの女装を思い出しちゃって」
「あれは楽しかったわヨネ!」
「でも、今となっては『普段見ないような格好』じゃないわね」
「ええ、ベリアスの女装はもはや『日常』ヨネ」

もしこの場にベリアスが居たら全力で否定するだろうが、
幸か不幸かここには居合わせていないためツッコミを入れることは不可能である。
二人の会話を耳にした通行人が
「ふーん、ベリアスさんって人は日常的に女装してる人なんだー」
などと変な誤解をしたとかしなかったとか。

■ ■ ■

シャレンの案内で小さな店にやってきた。
初めてこの店に来たラヴィエラは物珍しげに店内を見まわした。
身長よりも高い棚に所狭しと生地が積んである。

「生地はそんなに高級品じゃなくてモ、見栄えや肌触りが良いのって結構あるのヨ」
「……ねえ、シャレン。ドレスには何枚も生地が必要なのよね?
 こんなにたくさんあったらどれを選んで良いか分からないわ」
「それなら一番気に入った色の生地を一枚だけ選んでミテ?」
「一枚だけでいいの? それならなんとかなりそうだわ」

ラヴィエラは生地を引っ張り出して、少し考え、また戻し、
別の生地に手を伸ばして、広げて、考え、また戻し……。
店の中をぐるぐる巡る。
そうして選んだのは晴れた空の青。

「これにするわ!」
「わかったワ。それじゃ、それをメインにしてコレを合わせまショ♪」
「早っ!」
「それからコレと……」

ラヴィエラが一枚選ぶのにかかった時間よりもはるかに少ない時間で、
シャレンは微塵も迷うことなく次々と生地を選びだした。
もう既に頭の中でデザインが出来ているようだ。

「お会計は?」
「297ダルクです」
「すごい! ほぼ予算ピッタリ!」
「じゃ、一度ボクの部屋に行きマショ」

■ ■ ■

以前ラヴィエラも住んでいた傾いた屋敷、『傾き荘』。
今日はあんまり傾いていないわね、なんてことを思いながら
シャレンに促されて部屋に入る。
彼女の自室は個性的な設えだった。
棚等の家具が立体的に配置されているせいで、室内なのに妙に段差が多い。
深い青緑色のカーテンは夜の森の色を思わせた。
造り物の植物が飾られていて、まるで廃墟の一角に迷い込んだよう。

「それじゃラヴィのナイスバディを見せて貰っちゃおうカシラ」
「えっ!? ぬ、脱ぐの!?」
「採寸するんダカラ当たり前じゃないノ」
「うう、恥ずかしいわ……」
「大丈夫ヨ、公開したりなんてしないカラ★」

シャレンは冗談めかしてウインクひとつ。
恥ずかしがるラヴィエラに薄手のロングシャツを差し出した。

「コレに着替えてくれるカシラ」
「……! 私、てっきり真っ裸になるのかと!」
「そんな事は一言も言ってないワヨ★」

* * *

薄いシャツに着替えたラヴィエラの後ろにまわり、
シャレンはメジャーを伸ばした。

「腕を上げて」
「はい」
「腕を下ろして」
「はい」
「座って」
「はい」

細かく指示を出し、正確に寸法を取って、メモをする。
一連の作業を繰り返し、データは揃った。

「これでいいワ。後は出来あがりをお楽しみにネ★」

■ ■ ■

ラヴィエラは指折り数えて楽しみに待っているだけだが、
シャレンは期日までにドレスを完成させなくてはならない。
日程的にはあまり余裕はないが、シャレンは焦っていなかった。
十分間に合う自信がある。

大まかな形は買い物の時点で決まっていた。
シャレンは具体的なスケッチを白紙の上に描く。
テーマは『黎明の青』。
空がしらじら明け始め、白から青に変わってゆく。
キンと冷えた空気。
舞い踊る風花。
冬のドレスに相応しく、雪の空のイメージで。
スカート部分に白銀のラメを散らして、
裾に向かう程雪が積もったように白くなるデザインに。
ふわり軽くレースを重ねて……。
すらすらと止まることなく、シャレンはペンを走らせた。

(装飾はやっぱり白薔薇よネ)

胸元とスカートに白薔薇を咲かせる。
それからチョーカーや髪飾り等の小物にも。

デザインが決まったら、次は型紙。
寸法のメモを一瞥し、いくつものを定規を使って型紙をおこす。
立体的なイメージは頭の中。
細かいパーツにわけて、迷うことなく生地を裁断する。
とても楽しそうに、時々にやりと笑って。
シャレンはただの布を美しいドレスへと変えてゆく。
それはまさに魔法そのもの。
もしラヴィエラがこの場に居たら全力で称賛するだろう。
シャレンの指が生み出す魔法のような技に感動するに違いない。
灰被りを姫君に変えた魔法の杖のひと振りよりも、
この『魔法』はずっと緻密で、地道で、温かい。

■ ■ ■

23日。冬のお祭りの前々夜。
ラヴィエラはシャレンに呼ばれて傾き荘のシャレンの部屋に来た。
渡されたのは、雪夜の空のような包装紙に包まれた、一抱え程ある大きな箱。

「開けてみるといいワ」

森の色した大きな目に少しの期待を滲ませて、シャレンは友人の反応をうかがう。
大真面目な顔のラヴィエラは震える指で丁寧に包みを解いた。
緊張しているのだろうか。

「ラヴィったら、そんなに固くならないデ! 普通に触っても壊れたりしないワヨ」
「う、うん。でもなんだかドキドキしちゃって……」

やっとのことで箱を開けると、中には丁寧に梱包されたドレスと
『 Yours ever 』と飾り文字で書かれたメッセージカードがあった。
梱包を解いてドレスを広げる。
ふわり広がる、雪舞う空に咲く白薔薇のドレス。
雪に咲く白薔薇

「……っ! ……!!!」

ラヴィエラはドレスに注いでいた視線をシャレンへと転じて何かを言おうとする。
しかし、陸上の魚の如く口をパクパク動かすだけで、声が出てこない。
どうやら感極まって言葉にならないらしい。
ドレスに視線を落としたかと思えば、顔を上げてシャレンを見て、またドレスを見て。

「そんなに気に入ってくれたノ?」

ラヴィエラは勢い良くぶんぶんと首を縦に振る。
シャレンは優しい。そして感情の機微に聡い。
こちらが言葉にする前に気持ちを察してくれる人だ。
今も言葉にできない程嬉しいということを分かってくれた。

ラヴィエラは一度深呼吸をする。それからお礼を、心から。

「本当に、本当に素敵! ありがとう!こんな素敵なドレス、見たこと無いわ!」
「ふふ、喜んでもらえて良かったワ」
「着てみてもいいっ!?」
「もちろんヨ。ヘアアレンジとかメイクとかも任せてミナイ?」
「ええ!お願いするわ!」

* * *

髪を結いあげて。
青と白のストライプのリボンや白薔薇、連ねた真珠で飾って。
メイクは大人っぽくナチュラルに。

「こんな感じでどうカシラ?」

仕上げを終えて、シャレンは手鏡を渡す。
鏡に映る姿を目にしたラヴィエラは感嘆の声をあげた。

「うわあ! 流石シャレンね! センス良いわ、何もかも!」
「チョット褒めすぎヨ」
「ううん、足りないくらいよ! 言葉では言い表せないわ!」

喜色満面のラヴィエラ。シャレンに抱きつかんばかりの勢いである。

「どこからどう見ても貴婦人よね!」
「ふふ、そうネ。立派なレディだワ」
「……あっ!」
「どうしたノ?」
「新しいドレスと靴でも踊れるように練習しなきゃ!」

ラヴィエラはじっとシャレンを見つめる。
彼女の目は間違いなくある事を訴えていた。
ダンスの練習に付き合って欲しい、と。
それにシャレンが気付かないはずはない。

「チョット待っててネ」

* * *

燕尾服のような黒基調のコートとタイツに着替えたシャレンは、
上げ底ブーツのせいでいつもより背が高い。
先程までは道化じみたメイクをしていたが、今は薄化粧だ。
目尻や頬に薄く茶系を入れて、キリッとした印象になった。
その姿はまるで少年のよう。

「お嬢様、お手をどうぞ」

低めに作った声色は、舞台の少年役の声。
舞台のワンシーンのように恭しく手を差し出せば、
目を瞬かせるラヴィエラと目が合った。
普段見慣れた姿ではなくても、
悪戯っぽくウィンクしてみせるその表情はいつものシャレン。
ラヴィエラは笑って彼女の手を取った。

「次のステップとか考えなくていいのヨ」

シャレンは男役の立ち位置でラヴィエラをエスコートしつつ助言する。

「足は2本しか無いんだカラ、相手に合わせて交互に動かせばそれでイイノ」
「そう考えれば簡単だわ」
「そうヨ。難しく考えるコトないノヨ」

有名なワルツの曲をハミングしながら踊る。
ステップに合わせて、ドレスの裾にあしらった真珠の飾りが優しく揺れる。
蒼穹に舞う雪のように。

* * *

「ラヴィは背筋が伸びていてバランスが良いカラ、普通にしてれば大丈夫ヨ★」
「シャレンにそう言って貰えて、なんだか自信が出てきたわ」

一曲分のワルツをミスすること無く踊り切って、ラヴィエラの顔は晴れやかだ。
シャレンのリードが上手かったお陰かもしれないけど、それでも。
(こんな素敵なドレスを作れちゃうのって魔法みたいだと思ってたけど、
 シャレンの言葉も魔法みたいだわ……。上手く踊れそうな気がする)

「当日はボクもドレスだケド。また一緒に踊りマショ。」
「ええ、約束ね♪」

綺麗なドレス、シャレンの言葉、楽しい約束。

物語の魔法は解けるけど、この魔法は消えない。
ずっと私のもの。

■ 終わり ■
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